停学中に旅をして、そのとき入った本屋で、植村直己さんの『青春を山に賭けて』に出会った。植村さんの名前も当時はほとんど知らなかった。小学校のときに、教科書に出てきたのをなんとなく覚えているという程度だ。
 別に山の本を探していたわけじゃない。小学校のときから冒険ものは好きで『ドリトル先生航海記』や上温湯隆さんの一生を追った長尾三郎さんのノンフィクション『サハラに死す』などをよく読んでいた。
 植村さんの本を読んで驚いたのは、彼も落ちこぼれだったということ。決してスーパースターじゃない。日本を脱出してアメリカで不法労働でつかまり、小心者のくせにフランスでスキーもできないのにできると嘘をつく。自分がエベレストに登ったときは、同じチームでアタックできなかった他の人たちに申し訳ないと悩んだり、とても繊細な人だということが分かる。
 植村さんは、決して強い人じゃなかった。それなのに、なんだかんだと言いながら夢を実現していく強さ。世界中を旅しながら、必死で生きている姿があった。
 完全に「植村直己」という個人の名前で生きている。
 僕はこの本の影響をとても強く受けた。こういう人もいるのかと新鮮だった。

確かに生きる 落ちこぼれたら這い上がればいい|野口健 (集英社文庫)



青春を山に賭けて|植村直己 (文春文庫)

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